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筋力弱くたどたどしく何もわかってない

究極の文学と極東の高速機・『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019)

いきなりタイトルとは別の作品の話から始めて恐縮だが、アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』(1934)の結末には、ずっと納得できないままだった。事件の真相にたどり着いたエルキュール・ポワロはある決断をする。しかし、それが彼らしくない気がし…

死神たち

先週の『デトックス女子会会議室』は久保ミツロウさんのターンで、テーマは「タダでも読める漫画会議」だった。『ユーリ!!! on ICE』の情報に飢え過ぎて、まだここ数ヶ月のことなのだが、原作者のYouTubeまでフォローし始めてしまった。ここ数回は飼い始めた…

女王と王女の国

『アナと雪の女王』のハンス王子とは結局何者だったのだろうと考えていたら、アンデルセンのとんでもない深みにはまることになってしまった。『アナ雪』の監督によれば、ハンス王子とは真実を歪めて見せる悪魔の鏡であり、その名は原作者アンデルセンのファ…

ナイチンゲールよ、夢を見させて

『雪の女王』(1844)は、アンデルセンが三十代後半の頃の作品で、彼の童話の中では一番の長篇にあたる。執筆時の作家の年齢をゆうに越えた今、久し振りに読み返してみて痛切に感じたのは、ここに描かれていたのは克服しがたい失恋経験だったのではないかとい…

とある魔法戦争の記録

かつて、うら若い魔法使い見習いが、虐げられて嘆く友を助けるための呪文を唱えた。しかし、その呪文はやがて世界を破滅させるかもしれない禁断の言葉でもあった。そのことに気づいた魔法使いの師匠は、世界を守るために弟子が生まれる前まで時間を巻き戻す…

湾曲した鏡

なぜ、よりによってハンス王子なのか。一度気付いてしまうとそうとしか思えなくなる程、ヴィクトル・ニキフォロフの言動は『アナ雪』のハンスと被って見える。好きな食べ物を知りたがり、扉を開けさせたがり、決め台詞は「そういうの大好きだよ!」だ。自分…

氷の城の接線

「友達になれないのはわかったけど 何で写真はここで見せちゃいけないの? ミッキーマウスって丸裸で写真を撮っているの?」 「無断でキャラクターを使えないのさ ウォルト・ディズニー・カンパニーは厳しいからね」 さくらももこ『コジコジ』(1995) 立派な…

真昼のプリニウスと氷上のシェヘラザード『 ICE ADOLESCENCE』特報によせて

「それで、この計画全体というか、このシステムには何か名前は付いていないんですか?」と頼子は自分もだいぶこのプランを面白がっているなと思いながら、たずねた。 「ぼくはもう決めています。このシステムに、あるいはこれを管理するコンピューターに、付…

牛の要求と『メッセージ』(2016)

『メッセージ』という邦題はありふれていて、タイトルをいつか失念してしまいそうだと公開当時に危惧した覚えがある。原題は『Arrival』、テッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』の映画化だ。地球上のあちこちに同時発生的に謎の物体が飛来する。そ…